駆けある記

文教児童青少年委員会視察③ー福岡市こども総合相談センター

視察3日目、福岡市の子ども総合相談センターです。

福岡市は政令指定都市のので、東京でいえば都の児童相談センターと同じ位置づけになりますが、児童虐待が深刻さを増す今日、練馬区でも生かしたい取り組みを学びにいきました。

数十年間(?)もこの仕事一筋に頑張ってきた担当の方からお話を聞きました。

資料をみると、2005年当時センターへの通告相談件数は302件。それが年々増加して2014年度には718件と過去最高になりました。全国の相談件数でみると2005年が34,472件、それが2013年には73,802件と増加の一途をたどりますが、福岡市はこの数から言うと、やはり多いといえます。

2010年以降、「泣き声通告」が増えたようです。この背景には福岡で起きた6人の子どもの虐待死があったと言われています。センターは通告があると48時間以内に調査・安全確認をします。

ほとんど心配がないけれど、一方で通告をされたことにショックを受ける保護者もいて、それが逆に地域との孤立を生む場合もあるということでした。

こうした状況を受け、役所の職員が行っておどろかせるより、NPOの人たちに最初の訪問をお願いした方が、リラックスできるのではないかと考え、「子育て見守り訪問員」を派遣しています。

 子育て見守り訪問員

急増する泣き声通告の特に夜間と休日の安全確認の体制を強化するもの。保護者からの緊急保護の要請にも対応。泣き声通告の場合、児童相談所からの訪問ではかえって育児不安を助長することもあり、見守り訪問員が訪問することにより、より支援的関わりを強調する。そのことで、地域のより支援的関わりの醸成に寄与。

現在34名で運営。センターからの連絡を受ける総括と他2名計3名で当番体制。

 一時保護

この日はセンターの建物も視察させていただきました。

DSC_4922

こども総合相談センター「えがお館」の前で。

えがお館は、地下1階地上7階建ての建物です。ここには「まりんルーム・ほっとルーム」という一時保護所が併設され、0才~18才未満の幅広い年齢層の子どもたちを緊急一時保護、行動観察、短期入所指導を行っています。

2014年度の一時保護人員は440人、延べ13,919人。一人当たりの平均保護日数が30,7日で、一日平均保護人員は38,1人です。

一時保護所に入所する子どもは、家庭環境や親子関係に問題が多く、安定した家庭生活を送ってきた子どもたちは少ないため、家庭的で落ち着ける環境を心がけているとのことでした。

しかし、個人のプライバシーがほとんど守られない、幅広い年齢層の子どもが一緒に暮らすことを考えると、担当者からは国際的にみてどうなのかと子どもの人権を心配する声も聞かれました。

DSC_4934 (1)DSC_4924

子どもにとって家庭にまさる、安心・安全な環境はないはずですが、そこを奪われた子どもたちに最善の利益を保障できるようにと願わずにいられません。

特定任期付き職員

弁護士を任期付き職員として雇用し、児童虐待の法的対応をお願いしています。

親の激しい攻撃に耐える手段として法的判断が有効。日常的な法的対応の助言指導の中で専門性の確保とともに職員の業務に対するモチベーションやモラルを高める。その結果親権より、「子の利益」を優先するセンスを身につけることができたそうです。

 

虐待をなくすために

説明を受ける中で、現代が虐待を生み出しやすい状況が広がっているとのこと。その一つが一人親と貧困です。児童虐待のあった家庭のうち、「生活保護」「所得税非課税」など低所得世帯は約65%。また、児童養護施設入所児童の6割が虐待を受けているとの報告もあります。貧困と虐待の連鎖を断ち切るためには、一人親への経済的支援とともに相談機能の強化、孤立させない取り組みが大事なのだと思います。

一方、高額所得の家庭での虐待は見えにくく、行政も入りにくいそうです。

こうした問題をどのように解決していくのか。自治体も国はもちろん社会全体で考えなければならない課題だと思いました。こどもの権利を全面的に保障できるよう私もできる限りのことをしていきたいと改めて考えた視察でした。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP