こんにちは、日本共産党練馬区選出都議会議員とや英津子です。
今日の夕方は、商店街が主催する阿波おどり。帰って一段落すると気になることが頭をめぐり落ち込むのですが、明日は文教委員会。3日からは都議会第三回定例会が始まりますので、気持ちを引き締めなければと思い直しています。
前回投稿した西武新宿線立体化問題の続きです。
疑問点その3ー地下化のメリット、高架化のデメリットは?
都の検討案には地下化のメリットも高架化のデメリットも評価項目にありません。連立事業が環境やまちづくりの面に大きな影響を与えるにもかかわらず、高架案と地下案の比較検討に、十分に反映されていないことについては、鉄道事業者の技術者からも疑問の声があがり、改善に向けた様々な提案が行われています。
たとえば、東急電鉄の山本隆昭氏は、「運輸政策研究」に寄せた「鉄道と道路の立体交差事業における事業評価の過大と改善方策」と題された論文において、「事業の評価項目として環境や市街地の一体化等の定性的な効果の重要性が(国の費用便益)マニュアル内で指摘しつつも、未だに十分に反映するにいたっていない」「その結果、環境面で優れながらも一般的に事業費が高価な地下式に対して評価が十分なされず、結果として事業費が安価であるという理由で高架式が優先される傾向がある」と指摘しました。そして、景観や地域との合意形成などの項目を導入すること、騒音などについても、単に法令基準を満たすだけでなく、沿線のマンションなどに影響を与えないなどの評価基準を満たす方式を提案しています。
JR東日本の宮野義康氏は、「鉄道と道路の連続立体交差事業による周辺市街地への影響について」という政策研究大学院大学の修士論文で、「地下のメリットである環境改善効果が適切に評価されず、高架化と地下化の便益に差異が生じなくなることで、物理的な支障等の例外を除き、一般的に事業費の小さい高架化ばかりが選択されてしまっているとも考えられる」と指摘し、JR東日本の中央線の連続立体交差事業で地下化を選択した場合、便益の増大分は約1200億円程度という試算を示し、地下化による便益が、地下化による費用の増大を上回るケースがあることを指摘しています。
以上のように、西武新宿線の井荻・西武柳沢区間の連続立体交差事業については、高架方式と地下方式のどちらを採用するかについて、シールド工法の工夫によって経費や工期を縮減することについても、環境やまちづくり、地元要望の影響を深く調査分析するということについても、検討が尽くされていないというのが率直な現状ではないかと思います。検討によっては、地下方式のほうが、住民の悲願である踏切の除去も早く実現するという可能性もあります。
疑問点その4ー評価項目が3点のみ
そうした専門家の指摘に一目置いた場合、注目されるのがこれも横浜市の総武鉄道での比較評価です。(下の表は陳情者の方からの提供)
まず、評価の内容ですが、「騒音等」について、横浜市は、高架方式は「騒音等は生じるが、対策は可能である」、地下方式は「影響はほとんどない」として、地下が有利だとしています。
ところが、都の場合は、高架方式については「振動騒音は、生じるが対応は可能である」、地下方式は「影響はほとんどない。開口部においては影響があるが、対策は可能である」としていて、ここからも、本来は、地下方式の方が優位にあると判断してもいいはずなのに、どちらも一重マルの評価になってしまっています。 地下部分は、騒音がほとんどなくなるのは明らかです。横浜市の方が素直な評価だと多くの方が思われるのではないでしょうか。
評価の項目についてはどうでしょうか。
横浜市には「景観」「地元要望」「まちづくり」という評価項目があり、いずれも東京都の評価項目にはないものです。
それぞれの評価は「景観」について、高架は「自然景観などが阻害される場合がある」が、地下は「鉄道関連の電柱などが取り除かれ沿線の景観が整備される」「地元要望」について、高架は「特になし」だが、地下は「地下化の要望がある」と。「まちづくり」についても、高架は「高架構造物ができるため、まちづくりの自由度は低い」とし、地下は「地上に構造物がほとんどないため、まちづくりの自由度が高い」としています。
三つの項目どれも、高架方式より地下方式の方が優れているとの判定です。こうしたことから、横浜市は総合評価で、高架方式は1重のマルだが、地下方式は2重丸だとして、地下方式を採用しました。
こうした事例に学び、景観や地元要望、まちづくりなどの項目を入れて評価をおこなうよう求めたところ、都は構造形式については、3つの条件から選定した、としか答えることができませんでした。
疑問点その5ーこれが情報公開なのか
都の検討経過を詳細に調べる必要があり、私たちも住民のみなさんも検討資料の開示請求をしていますが、肝心なところは公開されていません。事業費の見積もり、土地代との詳しい内訳などは大雑把なものしか出てこないのです。情報公開は都政の一丁目一番地ではなかったのかと改めて思っています。
また、完成後の地上空間も含めたトータルのコストについても、検討していないとして資料もなし。
つづく
この記事へのコメントはありません。