駆けある記

学校給食現場から(新婦人学習会)

こんにちは、日本共産党東京都議会議員(練馬区選出)とや英津子です。

葛飾区が学校給食無償化に踏み切りました。23区初の取り組みに練馬もわいています。

タイムリーな企画、新婦人主催で「学校給食の栄養士さんから現場の声を聞いてみませんか?」と題して学習会が行われ、途中から参加しました。

子どもたちの成長に欠かせない学校給食。貧困や虐待など子どもがまともに食事をとれない家庭もある中、ますます重要になっています。

子どもの家庭環境はもちろん、個々の子どもの状況も様々で、学校給食現場の苦労は計り知れません。一方、栄養士さんらが取り組む美味しい給食を作るための工夫と努力、やりがいと充実もある仕事であることが伝わってきた学習会でした。

コロナ禍での給食は?

コロナで学校休業もあり、家庭での食事が多くなって子どもたちは固食・濃食になったといいます。

そのため、ほかの子も食べているから食べてみようかなということが少なくなった。濃食 味の濃いものを食べる傾向も報告されました。

※「こしょく」とは?

生活環境が変わり食生活が変わり、家族がそろうことがなくなった、日本に現れた食事形態。

孤食ー人でとる孤独な食事。一人で食べると社会生活ができないので、食事を通じての社会性が育ちにくい。

固食ー好きなものばかり選ぶことによって、自然とメニューが固定化。栄養が偏り、生活習慣病の元になる可能性がある。

子食ー子どもだけで食べること。偏食になりやすく、食事のマナーが身につかず、楽しい食の体験ができない。

小食ー食事の量が少ない。ダイエットなどの食事制限は、栄養不足になり、成長期の体に大きな影響をおよぼす。

戸食ー外食ばかりの食事。脂肪と塩分の過剰摂取。野菜と乳製品不足になりやすい。

粉食ーパンや麺類など粉物が中心の食事。こなものにはやわらかい物が多く、かむ力がつきにくい。かむ回数が少ないころから、食べ過ぎにつながりやすくなる。

濃食ー濃い味のものばかり食べること。素材の繊細な香りや味を感じる味覚が育ちにくくなる。

虚食ー朝、食欲がない、何も食べないこと。朝食を食べる習慣がないと、食事リズムが体内で作れず、他の食事で対象摂取しがちになる。

「こしょく」と書いてこんなに種類がある。

練馬の給食はどんな体制でやっているか

練馬区では現在、栄養士は二校に一人。小学校には東京都採用の栄養士28名(5名は臨時採用)/65校中。会計年度任用職員の栄養士(月17日勤務)が34名。

中学校では都採用栄養士11/31校中。会計年度職員の栄養士(月17日勤務)が18名。

これには驚きました。以前、栄養士の仕事と採用の質問を都議会文教委員会でしたことがありますが、ひどい状況です。本来なら全員正規雇用でしょう。

給食は月22回くらいでですが、非常勤が半数以上を占めるなか、月4日~5日ほど栄養士がいない日があります。そのため不在の日があるのですがベテランの栄養士は怖くて休めない、トラブルがあるからといいます。

また、産休をとる栄養士が増えていて代替の栄養士がいない。やはり正規の栄養士が足りないのだと。

会計年度職員を配置しているため様々な影響が出ています。たとえば、献立作りが間に合わず役所の栄養士が献立を立てる。

区が参考献立を提供しそれを使うしかない。

全部正規の栄養士にすれば食育も進むのにと講師から嘆きの声がありました。

都は栄養士をまともに採用しません。そうしたもと、栄養士からさらに実践や学びを積んで取得する栄養教諭資格をもってその職についている人も増えていません。この問題で20年3月に質問をしました。

都の栄養教諭の人数はその当時63人で全国でも少なく、受験者数も合格予定者40人に対して5人でした。食育リーダーの育成の役割ももつ栄養教諭の職を設けるよう、国は自治体に提案していますが都がこの提案を採用したのは3年後。あまりに激務でやる人がいないと分かっていたのでしょうか。全国でも3,3%しかいないので最下位です。

食育の考え方は、文科省が提唱したもので、2005年に食育基本法が成立。その定義として、 1. 生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきもの 2. 様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てること。

とあります。食育の考え方はこちらから。

学校給食は、貧困家庭の栄養を補うという考え方から、子どもの教育として捉えるという考えに立つようになっています。食に関する知識、健全な食生活を実践するたにあるということです。しかし、正規の栄養士の配置と学校の協力なしでは実現できないハードルの高さがあります。

何年か前、韓国ソウル市の給食無償化について調査に行きました。食材の選び方、子どもたちにとっての給食の大切さなど驚くほど先進的といえるような取り組みでした。しかしソウル市は、東京に視察にきて給食実践を学び市の事業に生かしたというのです。いまでは、東京が遅れをとってしまいました。

民間委託も進む

民間委託が進む練馬区。69校中直営は9校だそうです。

講師の勤務先は直営校、一緒につくることもある。6名体制だが、この人数で作るのが大変だから。しかし一緒につくることで行程がみえるといいます。行程が見えれば献立の参考になる。

民間委託校は、全員が調理師免許を持っているわけではない。臨機応変な対応ができない。リーダーとの打ち合わせもできない。二つの仕事を掛け持つことも。翌日の仕事に影響が出ている自治体もあると聞きました。

練馬区は毎年3校を委託する計画を持っており、来年度には残り6校、3年後に直営はなくなってしまう。直営校でないと身につかないスキルがある。栄養士育成にとっても、学校給食そのものにとっても直営が大事なんだと感じています。

直営校と民間委託校の違い

【直営校】

・調理師は全員調理師免許保持。全員が経験豊富で、給食時間に合わせて調理ができている。・栄養士は直接調理師に指示できる。・人数が少ないので誰かが休むと大変。・公務員は副業を認められていないので勤務時間の中でしっかり仕事が完了。

【民間委託校】

・調理師免許を持っているのは社員(3人~4人)のみ。残りはパート。

・栄養士は直接調理師に指示できない。・委託会社は賃金が低いので副業する人もいる。・経験年数の少ない人も多く、臨機応変の対応ができないことも。

子どもたち状況は?

食物アレルギーをもつ子どもが増加しています。そして、調布での事故(食物アレルギーの既往のある小学5年生の女児が給食後にアナフィラキシーショックを起こして亡くなった事故)以来厳しくなる。エピペンを持っている子も。

命がかかっていることで、アレルギーのある子は一人ひとり保護者と担任と相談し、除去食を提供しています。しかし、これが続くと子どもは自分の食事には食べてはいけないアレルギー源は含まれていないと勘違いすることになるといいます。そこで、年に一回二回は自分で除去できるようにしている。

アレルギー対応の苦労が伝わってきました。だからこそ会計年度の栄養士では困難。正規の栄養士をを求めているということです。

さらに感覚過敏の子もいます。給食の匂いを受け付けられない自分の困難を抱えている子。感覚過敏の子が成長して、自らの体験を綴った絵本を紹介していただきました。

練馬区ならではの給食

キャベツの日。練馬区ではキャベツをみんなで食べる日があるそうです。しかし、キャベツの日と最初に言っているのに、キャベツとレタスの区別がつかない子もいる。小松菜とほうれん草の区別がつかない子も。

練馬大根の日も。

どちらも練馬区ならではの食材ですが、補助はキャベツ二日と大根一日だけ。

お米代補助、牛乳代補助がある自治体もあるようで、もう少し補助してもらいたいと言っています。

講演をうけて、会場からは様々な発言がありました。

高い食材がつかえない

食材費の高騰も大きな影響があります。

果物の回数が減る。切り方、四分の一から六分の一。爪に灯をともしながらやっている。使える食材が少なくなっている。とにかく安いもの、畑のお肉を二月に一度が毎月に。月に一日二日がつんと食材費を抑える日を作らなければならない。区は補充はしてくれるが、栄養士が年間を通じて帳尻を合わせなければならない、誰かが計算してくれるわけではない。

小さなお子さんを持つお母さんも参加して、会計年度職員のこと、普段全く知らないことを教えてもらった。自校給食で美味しいと聞いて子どもを通わせている。など感想も寄せられました。

私からも前述の栄養教諭のことを質問しました。練馬では栄養教諭はたった4人だそうです。

学校給食は教育そのものです。正規の栄養士を配置し直営でおこなうこと。何よりも無償にすべきです。東京都は都内どこに住んでいても安心して給食を食べられる環境を保障するため、全都で給食無償化を目指して欲しい。

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